映画「グランド・ブダペスト・ホテル」おもちゃ箱をひっくりかえしたような映画

グランド・ブダペスト・ホテルウェス・アンダーソン監督

 

 

 

ヨーロッパ大陸の東端にある仮想の国ズブロフカ共和国が舞台。そこにある高級ホテルを取り仕切るカリスマ的コンシェルジュと若いベルボーイの交友を描いたドタバタコメディ。

二人に何が起こるのか?そしてこの映画の裏側に描かれているものは何なの?

 

ラブ **

笑い ****

涙  *

スリル*

美  ****

 

※5段階評価。個人的な感想です。

 

絵本を眺めるような、おもちゃで遊ぶような、夢の中にいるような、どこか違う異空間に入りこむ子供の頃に味わったあの感覚を思い出す映画でした。ポップコーン片手に、ボケーっと見て楽しめる映画です。ただ映画のストーリーは子供が見るような純粋なものではないのでご注意くださいね。人が死んだり、殴られたり、追われたり、助けたり、助けられたりとグロくはないのですが、忙しくドタバタしてます。笑

そんなドタバタが子供がせわしなく遊んでいるところに自分も巻き込まれていくような不思議な感覚を味あわせてくれるのだと思います。

キャクターが動くリズム、次から次に変わるシーン、真っ赤なエレベーター、濃い紫色の仕事着、ピンクのお菓子箱、真っ黒な悪いやつ、ワクワクの波が押し寄せてきます。可愛い映画。

 


映画『グランド・ブダペスト・ホテル』予告編

 

面白いのが、時代によって画面サイズが変わるということ。

こういう設定をする映画は初めて見ました。

監督ウェス・アンダーソンのこだわりなのかもしれません。

 

また興味深いことが映画の裏側に。

映画の最後に「シュテファン・ツヴァイクの著作」に献辞が捧げられていますが、アンダーソンが脚本を書く上で影響を受けたオーストリアユダヤ系作家・評論家シュテファン・ツヴァイクの自伝「昨日の世界」や「変身の魅惑」「心の焦燥」に捧げたものだそうです。ツヴァイクは1930年代〜1940年代にかけてマリーアントワネットなど歴史上の人物の伝記は発表し大変有名になり、優雅な暮らしうちに戦争なんてなくなる時代が来ると「世界平和」を熱心に唱えていた人物であったのですが、第二次世界大戦を目の当たりにしたことで「世界平和なんて叶わない」と絶望し自殺によって生涯を終えてしまいました。激動の時代に平和を願った彼の作品は焼かれ、多くの人に読まれることは無くなってしまったそうです。

監督はたまたま手に取ったツヴァイクの作品に感銘を受け、様々な著書からヒントを得て「グランド・ブダペスト・ホテル」の中に散りばめ、コメデイの中に希望と絶望の表裏を描いたのです。

 

こういったこと分かりやすく語ってくれているのは英評論家の町山智治さん。

私はこれを聞く前に映画を見てしまったのですが、町山さんの解説を聞いてから見てみれば違った視点から見れただろうなと思いました。難しいことが嫌いでなければ是非!

「おもちゃ箱をひっくり返したような映画」って言うのも町田さんの言葉に共感したので使いました。

 


町山智浩が映画『グランド・ブダペスト・ホテル』を語る

 

さあ、おもちゃ箱ひっくり返して遊びましょう。